2014年に「キャッシュレス化に向けた方策」が打ち出され、その内容に「百貨店における面前決済の一般化」というものがある。今回は、百貨店における面前決済が本当に一般化しているのかどうかを現場で働く方に聞いてみたので、参考にして頂ければ幸いだ。
目次
1. 面前決済とは?
面前決済はお客さんの目の前でカード決済するという意味であり、これは「2014キャッシュレス化に向けた方策」で使われている言葉だ。一般的にはそれほど普及している言葉ではなく、使うことも殆どない。
- 面前決済:客の前でカード処理すること
- 対面決済:街中の加盟店を指す意味で使うことが多い
- 非対面決済:ネット上の加盟店を指す意味で使うことが多い
キャッシュレス政策に面前決済が盛り込まれているのは、外国人観光客が増加傾向にあることからカード決済でのトラブルを減らし、安心して買い物ができる環境を作りあげるという狙いがある。
1-1. 面前決済に法的なルールはない
面前決済は、国の法律として決められているルールはない。また、加盟店契約においてもルールはない。
特にこれといってルールがないので、面前決済をしないからといって罰則などもない。
1-2. 面前決済のメリットとデメリット
面前決済を行うかどうかは、そのお店の方針や販売員の判断に委ねられる。
面前決済を行う場合、お客さんは安心してカードを使うことができ、お店にとっても信頼を得やすくなるメリットがある。
面前決済を行わない場合、お客さんはカードを使うことに不安や抵抗を感じやすく、お店にとっても信頼の低下に繋がるデメリットがあり得る。
例えば、見えないところへカードを持っていかれると、「カード番号やセキュリティコードをメモされているかも」という疑心暗鬼に陥ることが無きにしも非ず。
1-3. 百貨店の外国人観光客の推移
「日本百貨店協会」では、外国人観光客に関するデータが月単位で速報として公表されている。
【2014年・10月~12月】
- 10月:約11.6万人、1位は中国本土
- 11月:約11.8万人、中国
- 12月:約14.3万人、中国
【2017年・1月~12月】
- 1月:約33万人、中国
- 2月:約30万人、中国
- 3月:約29.6万人、中国
- 4月:約33.1万人、中国
- 5月:約29.7万人、中国
- 6月:約29.5万人、中国
- 7月:約35.7万人、中国
- 8月:約32.1万人、中国
- 9月:約33万人、中国
- 10月:約38万人、中国
- 11月:約35.3万人、中国
- 12月:約40.3万人、中国
「キャッシュレス化に向けた方策」が発表された2014年に比べると、2017年は2倍以上に外国人観光客が増えている。
また、免税手続きカウンターの国別では、1位がずっと中国だ。2位以下は「香港」、「韓国」、「台湾」が争う形となっており、月によって異なる。
2. 面前決済に関する5つの質問を尋ねてみた
今回は大阪府の心斎橋にある「大丸松坂屋百貨店」で働く方に話を伺うことができ、面前決済に関して5つの質問に協力して頂いた。
- 百貨店協会などから指示はありましたか?
- 上司から面前決済の指導はありましたか?
- 面前決済を意識していますか?
- 面前決済に関してトラブルはありますか?
- 店裏へ行くときにカードを一旦はお客さんに返しますか?
百貨店へ行くことが多い方ならお気付きだと思うが、百貨店はお店によってコンビニのようにカウンターのところにレジがない。協力者の方が働いているお店もこれと同じであり、フロアの構造として「面前決済をしたくてもできない」というのが印象的だった。
2-1. 百貨店協会などから指示はありましたか?
この質問に対して、特に百貨店協会などから面前決済を行うように指示はないようだ。
これは各フロアの構造からも大よそ推測できる回答だった。
2-2. 上司から面前決済の指導はありましたか?
この質問に対して、上司から面前決済の指導などはないようだ。
こちらも上記の質問と同じだ。
2-3. 面前決済を意識していますか?
この質問に対して、自分が海外へ行った時にカードを使う場合と同じく、やはり面前決済をする方が良いことは十分に分かっている。しかし、フロアの構造からも自分自身の判断や業務内容だけでは限界があり、面前決済をしたくてもできないという回答を頂いた。
ここ数年で銀聯ブランドが国内で飛躍的に普及しているが、協力者のお店では1日のお客さんの半数以上が中国人といった日も珍しくはないらしい。実際に外国人観光客を相手にしているだけに、面前決済については何かと「思うこと」や「考えること」があると語っておられた。
2-4. 面前決済に関してトラブルはありますか?
この質問に対しては、面前決済をしてくれと言われることがあるとおっしゃっていた。
「面前決済をしてくれと言われたら、どのように対応するのですか?」と聞いたところ、フロアの構造として面前決済ができないため、お客さんをレジの近いところまで案内していき、お客さんの不安が払拭されるまで説明し続けるとおっしゃっていた。
今のところ、この対応で理解を示してくれる外国人観光客が多いため、特に大きなトラブルに発展したことはないと語っておられた。
2-5. 店裏へ行くときにカードを一旦はお客さんに返しますか?
この質問に対しては、フロアの構造上として面前決済ができないため、上記の質問と同じ対応を取らざる終えないようだ。
通常はサイン決済なのでカードを預かったらレジで処理を行い、カードの返却と共にサインを求めて決済完了という流れのようだ。銀聯カードだけは暗証番号の入力が必要なので、その場合は上記の対応と同じでレジに近いカウンターのところで暗証番号を入力してもらうようだ。
また、大丸松坂屋百貨店は現金払いの場合もポイントを付与するためにカードを提示されることが多く、お店が混雑している時にカードを渡し間違えるミスがあるという経験も語ってくれた。これは担当する自分のミスだが、「面前決済ができる環境なら・・・」と語っておられた。
3. 接客販売技能検定
2017年10月から「接客販売技能検定」という資格が厚生労働省に認可され、今後の接客業界においてスキルアップの1つの方法として注目されている。
- レディスファッション販売
- メンズファッション販売
- ギフト販売
接客販売技能検定は3つがあるが、それぞれの試験科目や範囲を閲覧したところ、特に面前決済については内容がない。
3-1. 接客販売技能検定とキャッシュレス政策は関係がない
接客販売技能検定は、今後に外国人観光客が増えることを想定して販売員の実力を底上げするために登場したようなイメージも持たれるが、キャッシュレス政策との関連性はない。
単純に国内の雇用拡大などの趣旨で登場した資格であり、厚生労働省が公表している議事録でもキャッシュレス政策との関連性は見られなかった。
しかし、「2020年の東京オリンピック・パラリンピック」叱り、キャッシュレス先進国からも多くの観光客がやってくると、今以上に面前決済への対策が必要となる可能性も大いにある。
まとめ
百貨店における面前決済の一般化については、国が公表しているデータがこれといって特にない。
日本百貨店協会でも面前決済に関する情報が見られないので、大阪の「大丸松坂屋百貨店」と同じように全国的に一般化していこうという流れにもなっていなさそうな雰囲気だ。
今後、どうなるのかは分からないが、百貨店へ行った時にちょっとした情報として面前決済に注目してみてはいかがだろうか。
※今回協力して頂いた方々へ
「現場の悩み」を知ることができる貴重な機会となり、とても感謝しています。ご協力、どうもありがとうございました。
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